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修正手術 眼瞼下垂症 secondary repair

低矯正(アンダーコレクション、挙上不足)


手術の結果低矯正になった場合、考えられる原因はいくつもあります。
原因に合った治療を行わないと、何度手術を行ってもまぶたはきれいに挙がりません。


■低矯正の原因と治療方針

1.眼瞼挙筋腱膜の前転量が不足
  治療➔➔ 挙筋後転術(再度腱膜の前転)
 
2.眼瞼挙筋のロッキング(靱帯や繊維にひっかかって開かない)
  治療➔➔ ロッキングのリリース

3.腱膜の固定の緩み
  治療➔➔ 再固定

4.眼瞼痙攣 
  治療➔➔ 眼瞼痙攣の治療

5.皮膚の下垂(腱膜が皮膚を挙げ切れていない)
  治療➔➔ 皮膚のかぶさりの治療

6.他方の眼の挙がりすぎ 
 (ヘリングの法則:Herring`s low 片方のまぶたが下がると他方のまぶたが挙がる)
  治療➔➔ 他方の眼の過挙上を治す

7.利き目・視力の左右差・生理的な調節 
  治療➔➔ 開瞼トレーニングなど

●多い原因は「前転量の不足」と「眼瞼痙攣」
術後に脳が左右のまぶたの挙がり方を調整する中で、結果的に前転量不足となったものです。

なぜ前転量の不足が生じるのか? 
A:前転量と最終的なまぶたの挙上具合は比例しないことが多く、前転量の計算式をつくって手術を行っても一発で左右が揃う確立は90%程度です。

前転量の不足は、再度眼瞼挙筋前転術を行えば治りますので、簡単です。

●腱膜の固定の緩みの防止

吸収糸を用いて腱膜の固定を行っていたときには緩みが多かった様に思います。

腱膜のひっかかっている部位をリリースした後、非吸収糸(ナイロン糸)を用いて腱膜4点止めを行うことにより、緩むリスクはぐっと減りました。

●「眼瞼痙攣」は意外に多い

眼を閉じる力が強すぎて眼が開かなくなります。病態がまだ未解明で治療が簡単ではない厄介な状態です。

ボトックスが著効することがあります(理由があって効かないケースもあります)。眼瞼痙攣を引き起こしているとみられる原因を見つけて治療します。

●修正手術が失敗するケース

原因を突き止めて正しく治療できた場合には、修正手術は90%以上成功します。

初めに原因がわからなくても、何度か診察を繰り返す内に判明することは良くあります。先入観にとらわれずにまぶた&周囲を良く観察することが問題解決のための鍵です。

 

<症例1>低矯正(アンダーコレクション)

▽病歴

某クリニックで、眼科専門医による眼瞼下垂の手術を1度受けた(詳細不明)。
が、まぶたはあまり挙がらなかった。

●術前(他医にて1回手術後)
眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
正面 右のまぶたが低矯正(左も眼瞼下垂+)

眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
上方視 まぶたの動きが大きく低下

▽手術計画
挙筋機能(まぶたを挙げる筋力)がとても弱くて7mmしかありません。
眼瞼挙筋腱膜前転術では十分にまぶたを挙げることが出来ないと判断→ゴアテックス糸により吊り上げ術を予定
(手術中に眼瞼挙筋の動きを実際に確認して最終決定する)

●手術
眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功

■部分切開法眼瞼挙筋腱膜前転術

皮膚切開:傷跡に沿って切開
眼瞼挙筋のロッキングをリリース:眼瞼挙筋の動きが悪い原因は、周囲に引っかかっているためであることを発見。
腱膜前転術
:挙筋腱膜を瞼板へ固定 4カ所
手術時間:約20分

 ●術後5ヶ月
眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
正面視 まぶたは楽に開く様になった。
この時点で左眼の手術も希望

眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
まぶたの動きは著しく改善

眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
問題なく眼を閉じることが可能 

眼瞼挙筋の筋力は実は残っているが、筋肉がまぶたの中の繊維に引っかかっているために動きが悪くなっているケースがしばしばあります。引っかかりを丹念にリリースすればスムーズにまぶたが挙がるようになります。

このような状態で、筋膜移植やゴアテックス糸などによる吊り上げ術を受けてしまっている症例を多く目にします。


<症例2>低矯正(アンダーコレクション)


(他医にて2回手術後)
眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
正面  右のまぶたが低矯正

▽病歴

某総合病院の形成性外科で、形成外科専門医による眼瞼下垂の手術を2度受けた。

・1回目の手術
右眼の眼瞼下垂症手術(部分切開法眼瞼挙筋腱膜前転術)を受けたが、まぶたの下垂は改善しないために再手術
・2回目の手術
眼瞼挙筋腱膜前転術

ほとんど挙がらなかった....

▽手術計画

まぶたが挙がっていない原因として、「前転不足」や軽度の「眼瞼痙攣」の可能性も疑いましたが、最終的には、「腱膜がまぶた皮膚を挙げきれていない」のが主たる原因であると結論付けました。

まぶたの皮膚を左に同じ内部構造に変えることを目的として、組織量の調整と腱膜の枝の処理を計画しました。

幸運にもまぶたの皮膚を切り取られていませんので、手術はやりやすい状態です(皮膚が少ないと修正が難しくなる)

●手術
眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功

■部分切開法(小切開法)眼瞼挙筋腱膜前転術

皮膚切開:傷跡に沿って切開
腱膜前転術:挙筋腱膜を瞼板へ固定 4カ所(わずかな前転量)
腱膜の枝の処理:まぶたの縁の皮膚を持ち上げる

手術時間:約20分


●術後7日
眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
正面視 まぶたは楽に開く様になった。左右差は少ない。白目に内出血が少し残る。

眼瞼下垂,手術,失敗,術後,修正,成功
問題なく眼を閉じることが可能 まぶたの縁に内出血残る。

もしも腱膜の再前転を行っていれば、眼を閉じることが出来なくなる危ない症例でした。

修正手術では、まぶたおよび周囲の状態をよく観察して、原因をとことん突き止めて治療しないと失敗します。

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