眼瞼下垂(がんけんかすい)とはwhat's blepharoptosis?
1.眼瞼下垂とは、まぶたを挙げる筋肉の筋力の不足または筋力の伝達不良のためにまぶたが開きにくい状態です.
2.眼瞼下垂症には、生まれつきの先天性眼瞼下垂症と、後天性眼瞼下垂症があります。
3.後天性眼瞼下垂症は実は身近な病気であり、ほとんど全ての方が加齢に伴いだんだんと眼瞼下垂になってきます(程度の差があります)。
4.眼瞼下垂により、生活の質(QOL: quality of life)と視覚の質(QOV: quality of vision)が著しく損なわれます。
5.眼瞼下垂は美容面にも重大な悪影響を与えます。眼瞼下垂が進行すると額のしわだけではなく、顔全体が老化した表情に変化していきます。
6. 眼瞼下垂は徐々に進行するために自覚しにくい疾患ですので、多くの患者さんが治療を受けないまま数十年も放置されておられます。生命に関わる疾患ではありませんが、私達の健康を確実に蝕んでいきます。気付いたら早めに治療しましょう。
7. まぶたが開きにくい病気には、眼瞼下垂の他に眼瞼痙攣があります。眼瞼痙攣は、まぶたが閉まる力が強すぎて開きにくい状態です。眼瞼痙攣は、治療が簡単ではないとても厄介な状態です。原因はまだよくわかっていません。眼瞼下垂に関連して生じることもありますが、全く無関係に発症することもあります。
8. 先天性眼瞼下垂症は弱視の原因になります。弱視は時期を逃すと一生取り戻すことができませんので、視力獲得に適切なタイミングを逃さずに治療する必要があります。小児眼科医による視力管理を続けることが必須です。
眼瞼下垂(がんけんかすい)の原因と分類causes & classification
後天性眼瞼下垂(こうてんせいがんけんかすい)
生まれつきではなく、もともと開いていたまぶたが開きにくくなる病気です。大きく分けて2つの原因があります.」
■まぶたが開くメカニズムとは
自動車が走るメカニズムによく似ています。
①動力源 エンジン(眼瞼挙筋)
↓
↓②伝達系 ベルト・歯車(眼瞼挙筋腱膜)
↓
自動車が走る(まぶたが開く)
後天性眼瞼下垂症は、自動車の故障と同じです。
自動車は、①動力系または②伝達系のどこかが故障すると、調子よく走らなくなります。故障している部分を探して修理すると以前のように絶好調を取り戻します。
眼瞼下垂も、①動力系または②伝達系のどこかに故障があるためにまぶたが開きにくくなってますので、故障した部分を修理すれば元のように眼は良く開くようになります。
修理するには、まずはどこが故障しているのかをしっかり調査しないといけません。
後天性眼瞼下垂は、動力系か伝達系のどちらに異常があるかで2つのタイプに分かれます
■タイプ1.眼瞼挙筋の筋力低下(動力源低下群)
※後天性眼瞼下垂のうち、この状態の患者さんはそれほど多くありません。
まぶたを挙げる筋肉(眼瞼挙筋)の動きそのものが悪化するためにまぶたが開きにくくなります。自動車に例えると、エンジンの調子が悪くてのろのろ運転しか出来ない状態です。
<治療>
眼瞼挙筋の力が弱いので、前頭筋の力でまぶたを挙げる手術(ゴアテックス糸によるつり上げなど)になります。※といっても大げさな手術ではありません。
<病因>
眼瞼挙筋の疾患(重症筋無力症、筋ジストロフィー) 神経の疾患・外傷(動眼神経麻痺、ホルネル症候群、悪性腫瘍など) 老化・糖尿病による眼瞼挙筋の弱り など
※全身疾患や悪性腫瘍の一つの症状として眼瞼下垂が生じていることもありますので、特に再発例では全身精査が必要です。
■タイプ2:眼瞼挙筋腱膜の傷み(伝達系異常群 動力は正常)
※後天性眼瞼下垂のほとんどの患者さんはこの状態です。
眼瞼挙筋の力をまぶたに伝達する眼瞼挙筋腱膜は年月を経て傷んできます。自動車に例えると、エンジンは問題ありませんが、動力を車輪に伝える歯車などが壊れてのろのろ運転しかできない状態です。調子が悪いまま乗り続けていると、アクセルを踏みこんでエンジンをふかさなければ走らないため、燃費は悪いしエンジン(眼瞼挙筋)に大きな負担がかかり、いろいろな症状が起こってきます。耐久性の高い日本車でも10年も乗るといろいろな部品の修理や交換が必要になるのと同じ様に、私たちのまぶたも数十年も酷使しているうちにやはり修理が必要になります。
眼瞼挙筋腱膜の傷みですが、緩み、滑り、弱くなる、切れる 等とも表現されます。眼瞼挙筋腱膜の傷みは、程度の差はあれいずれほとんど全ての方に生じますので、超高齢化社会の現在では一生のうち一度は修理が必要になるといっても過言ではありません。と言っても手術を怖がる必要はありません。自動車と同じく傷んでいるところを修理をすればまた元のように調子が良くなります。
<治療>
眼瞼挙筋腱膜の修理(部分切開法、全切開法、結膜切開法、埋没法)
<病因>
眼瞼挙筋腱膜の加齢変化・コンタクトレンズ長期使用・眼のアレルギー、アイプチのしすぎ、アトピー性皮膚炎や逆まつげを気にしてまぶたのこすりすぎ、など
先天性眼瞼下垂(せんてんせいがんけんかすい)
生まれつきまぶたが開きにくい病気です。重度~軽度まで様々です。
<治療>
筋膜移植・ゴアテックス糸などによる前頭筋へのつり上げや、眼瞼挙筋短縮術
※重要:弱視の防止 先天性眼瞼下垂は視力の発達に対し悪影響(弱視)を及ぼすことがあります。軽度だからといって放置せずに小児眼科医の診察を受けることが必要です。身長は中高校生くらいまで伸びますが、視力が伸びるのは6才ぐらいまでとされています。その間に視力を伸ばすために出来ることをやらなければなりません。後で困っていくらがんばってもダメなのです。
<病因>まぶたを開ける筋肉の発育不全
眼瞼下垂(がんけんかすい)の症状Symptoms
後天性眼瞼下垂症は、まぶたが開きにくいことによる視野障害や開瞼困難に伴って生じる症状、眼瞼挙筋やその外の筋肉の負担が大きいために生じる症状、さらにまぶたのミュラー筋の負荷が増すことによって交感神経・副交感神経のバランスが崩れて様々な全身の症状が生じるという説およびうつ病などの精神症状の原因になるという報告もあります。的確な治療によって、心身ともに晴れやかさを取り戻すことが出来ます。
まぶた・眼の症状
- まぶたが重い・開きにくい
- まぶたがじゃまで見えにくい
- 眼精疲労
- その他の眼の症状(眼の奥の痛み・目の周囲の痛み・違和感、まぶしさ、めまい、涙の異常 等)
まぶた以外の症状
- 頭痛
- 肩こり・首の痛み
- 他の症状(顔、耳周囲の痛み、昼間眠い、鼻炎など)
美容面の症状
- ひたいの皺
- 眼の上のくぼみ
- 眼の下の眼袋
- 眼のクマ
- 疲れて見える 元気がない顔
- 怖い(冷たい)表情